初めてチャレンジする
決済インフラの開発
新たな決済プラットフォームの構築――私が担った任務は、当社創業以来初となるビッグプロジェクトでした。クレジットカード事業には、カードを保有して使うお客さまと、そのカードが使われる加盟店という2種類のお客さまが存在します。私が所属するアクワイアリング統括部は、後者の加盟店向けの事業を推進する部署です。契約をいただいている加盟店の売上から手数料をいただくのですが、手数料を何%に設定するか、カード会社間の競争は激しく、収益は非常に薄いものになっています。ぎりぎりまで下がっている手数料に頼るビジネスモデルを脱し、当社ならではの付加価値を提供する事業を推進すべきではないか――その追求から生まれたのが、決済端末やネットワークなどの決済インフラを自分たちの手で新たに開発し、提供しようという取り組みです。これまでの当社ビジネスでは他社に依存していた決済プラットフォームをゼロから構築し、加盟店の業務支援を強力に展開することにしたのです。創業50年を経て初めてチャレンジする大事業でした。
3社の共同事業で
加盟店のニーズに応える
プロジェクトはまず、加盟店がどういうものを求めているのかを徹底してヒアリングすることからスタートしました。何十社という加盟店を実際に訪問して膝をつき合わせて話し合い、さらに何百という加盟店にアンケートをお願いしました。そこからは、私たちが気付いていなかった様々なニーズが浮かび上がりました。例えば、サイン電子化への対応であり、売上データの管理や販促への活用をもっと有効に進めたいという声もありました。また、対面での販売データと非対面(EC)の販売データが別々のセンターで管理され、データ処理が一括でできないことへの不満、不正検知高度化の要望、さらには次々と登場する新たな決済手段に応じて付帯させなければならない機器の多さや追加費用のこと、カードリーダ―の使い勝手やデザインへの要望もありました。
私たちは、こうした現場の声を集めながら、キャッシュレス決済先進国である米国やシンガポール等に渡り、実態をつぶさに見学しました。米国における開発は、現状がこうだというところからスタートするのではなく、どういうものであるべきかということから、一つひとつ積み上げるように進められています。その姿勢には多くの学ぶべきものがありました。さらに私たちは具体的な開発体制を検討。世界最高水準のセキュリティ対策や不正検知システムを構築するためにVISA社と、また対面・非対面の決済を一括処理できる国内大手のGMOペイメントゲイトウェイ社とそれぞれ提携し、3社で共同開発することによって、加盟店のニーズに応える最新鋭のプラットフォームをつくりあげることにしました。
新たな価値を提供する事業を
続けていきたい
私たちは新たな決済プラットフォームをstera(ステラ)と名付けました。新しい時代(era)の舵(steer)切る、という意味です。様々な決済にワンストップで対応でき、リアル店舗とネット店舗のそれぞれの決済データを統合して処理することができます。世界最高水準のセキュリティレベルも確保しました。また様々なアプリケーションをダウンロードして利用できる拡張性の高さも備えています。端末のデザインは細部まで検討を重ね、店頭に置かれても店舗のイメージを損なわないシンプルで洗練されたものに仕上げました。「次世代」の名前にふさわしい決済プラットフォームになったと自負しています。
一連の開発業務の中で、私は全体の企画と並んで、特にVISA社、GMOペイメントゲイトウェイ社両社との交渉・連携部分を担いました。3社はそれぞれに「こういうものにしたい」という意向をもっています。それを1つにまとめ上げていくのは容易ではありませんでしたが、その点では、入社以来のキャリアを活かすことができたのではないかと思っています。これまで私はいくつかの新規事業の企画に携わり、様々な企業との提携交渉を経験しました。またSMFGの海外戦略を立案する部署へ出向し、東南アジア諸国を実際に訪れ新規事業の企画を検討した経験もあります。こうした中で培ってきた提携関係のマネジメントや交渉力が事業推進に活かせたと思います。
入社時から私は、新たな価値を提供する事業を手がけたいと思ってきました。それが、当社初のビッグプロジェクトを担うという形で実現しました。当社は望めば必ずチャンスを与えてくれます。その場所が用意され、環境も整っています。steraの船出を見届けた後は、クレジットカード事業の更なる発展に貢献したいと考えています。