POINT
キャッシュレス化により
日本が抱える社会的課題を解決する。
現在、日本が向き合う最大の課題の一つが少子高齢化に伴う労働力不足であり、少ない労働力で成果を上げるための生産性向上だ。小売り・外食産業において、現金を取り扱うことで負担しているコスト(現金の確保やレジの人件費、振込口座の管理費など)は年間約6兆円にものぼるとされ、成長の足かせとなっている。キャッシュレス決済の推進は、無人化・省力化、キャッシュフローの透明性向上、購買データの活用による消費の活性化、税収増など日本経済全体に様々な効果をもたらすとして政府が音頭をとって進める、いわば「国策」だ。この政策を進めるうえで、クレジットカード会社が直面する課題は主に2つ。第一に、現金決済志向の事業者・店舗・消費者に対し、いかにキャッシュレス決済を取り込んでいくのか。現金決済にはない便利さや安心・安全、お得感などのメリットをどのように浸透させサービスを提供していくのかをお客様目線であらためて考える必要がある。第二に、キャッシュレス決済手法の乱立で競争が激化し、事業者が「共倒れ」する心配や、手続きが煩雑で消費者が混乱してしまうリスクもある。業界で規格やルールを統一するなどの働きかけも必要だ。

「消費者が求める最良の決済シーンを実現する」というクレジットカード会社の使命に立ち返り、業界をあげて「消費者ファースト」の仕組みを整備できるか。それが、日本がキャッシュレス社会に向かって進めるかを左右する分岐点となる。
出典:野村総合研究所「ITナビゲーター2018年版」
(取材:NIKKEI STYLE U22 編集チーム)