SCROLL GAUGE

  1. Phase 01
  2. Phase 02
  3. Phase 03
  4. Phase 04

JOJ Journey of JAPAN

Phase 01 背景

観光立国の実現を阻む
日本のキャッシュレス化の現状

4000万人が視野に入った
訪日外国人数

2003年、当時の小泉内閣は「観光立国」を宣言、年間521万人余りだった訪日外国人観光客を、2010年までに1,000万人にするという目標を掲げた。今から振り返れば、ずいぶん控え目なゴールだった。訪日外国人は2012年以降急速な拡大を続け、2018年は3,200万人を突破するとみられている。現在国は「2020年に4,000万人、2030年には6,000万人」と目標を定める。外国人旅行者消費総額も年々増加。2017年は4兆4,161億円で5年連続で過去最高を更新した。2020年には8兆円を目指す。8兆円といえば、日本の総広告費6.4兆円を遙かに超える額だ。国内における有望な成長市場が訪日観光であることは疑いの余地がない。

日本の決済環境には
大きな課題があった

しかし、不安要素も見えはじめている。観光庁の調査によれば「旅行中の困り事」の上位に「スタッフとのコミュニケーション」「無料公衆無線LAN環境」などと並んで「クレジットカードの利用」が上げられている。しかも、この決済の関する不満は、2年前の調査より拡大していた。実際、日本のキャッシュレス化は世界の中で大きく立ち後れている。「各国のキャッシュレス決済比率」によれば、韓国の89.1%を筆頭に欧米の多くの国で40%~60%になっているのに対して、日本は18.4%と際立って低い。

キャッシュレス社会へ
国は大きく舵を切った

常に手元の現金を確認し、その都度両替して補充しなければならないのは、旅行の行動を縛り、楽しみを半減させる。消費の低迷、さらには訪日旅行者数の減少をもたらしかねない。危機感を持った政府は「未来投資戦略2017」において2027年にキャッシュレス決済40%、2020年までに外国人が訪れるスポットにて「100%のクレジット決済対応」「100%の決済端末のIC対応」を目標に掲げた。

インバウンドの波を
止めるわけにはいかない

三井住友カード(SMCC)としてもできることがあるのではないか?統合マーケティング部の細谷は、そう考えていた。細谷は2006年に当社に入社。主にファイナンス事業部やネットビジネス事業部で企画推進業務を担ってきた。クレジットカード決済という「社会インフラ」を守り、手数料収入で会社の基盤をしっかりと支えるのがSMCCの事業の柱であるとすれば、細谷が担ってきたのは、顧客のカードによる決済の瞬間ごとに、いかに新たな価値提供ができるか、それを発見し、新規事業として組み立てていくという“攻め”の業務だった。増え続けるインバウンドの波を、決済環境の不備で止めることはできない。外国人観光客をいかに加盟店でのクレジット決済に導き、決済においてどのような価値を提供するのか。求められていたのはその答えだった。

トレンドや社会課題に
常に敏感であること

細谷は考え続ける。アイデアが生まれるのは、会社のデスクに座っている時とは限らない。むしろ、まちを歩いているときや電車に乗って車窓から景色を眺めているときに、気づくことがあった。ある日の終業後、部の仲間と居酒屋で野球観戦をしていたときに、部長がふともらした「売り子からビールを買うときもキャッシュレスにできないものか」という言葉が、別の新規事業のきっかけにもなった。
世の中のトレンドや課題に常に敏感に接していることが新規事業の源泉になる。「楽しいですよ」と細谷は言う。「1を守り、それを1.2や1.5にするのは大きな努力です。しかし、まったくのゼロから1を立ち上げる仕事はダイナミックでおもしろい。仮に失敗しても、そこから学び、次のチャレンジにつなげていくこともできます。ルーティンを守るだけなら、安全だけれど成長もありませんからね」。

最初はWEBサイト。
広告料中心の
ビジネスモデルだった

間もなく細谷は、ひとつの事業企画をまとめた。「シンプルなものです。日本の観光情報を提供するWEBサイトを立ちあげ、海外のカードホルダーに旅情報と加盟店情報を提供しようというものです。どこに行けばカード決済ができる商業施設や店舗があるのかを示します。加盟店にとっても、お店を外国人客に紹介するチャンスになる。ページビュー(PV)を増やしながら、加盟店からの広告料で収益を上げていくというビジネスモデルです」。

全社を巻き込む
ビッグプロジェクトへ

細谷は走り始めた。新たなWEBサイトの名前は「Journey of Japan」。コンテンツ内容、制作体制なども詰めた。収支計画も含めて新規ビジネスとしての全体像を企画書にまとめ、上長に図った。インフラ整備や商品開発などと比べて、投資額の大きな事業でもない。激しく議論を戦わせなければならないほどではない――細谷はそう思っていた。しかし、役員の一言で細谷の提案はまったく新しい形で整理されることになる。企画は練り直され、それはやがて全社を動かす大きなプロジェクトへと発展していく。

JOJ Journey of JAPAN

Phase 02 構想

「認知」から「送客」へ。
プロジェクトは全社規模へと
大きく発展。

「まだ認知拡大なのか?」

細谷の描いたシナリオは崩れた。企画会議での細谷の企画説明の後、企画書から目を上げた役員のひとりはこう言った。「まだ認知拡大でいくのか? 確かに訪日外国人向けに加盟店の認知拡大を図ることは重要だと思う。キャッシュレス決済の推進にも役立つだろう。しかし、もう一歩、加盟店への送客に踏み込めないか?そうすれば加盟店にもっと大きな価値が提供できる。この訪日外国人向け事業で、送客にチャレンジしてみないか」と。

システムをパッケージで
売る時代は終わっている

「確かにそうだ」。細谷は同意した。以前から、細谷にも送客への問題意識はあった。「これまで私たちが提供してきたのは、端末の設置による決済システムの構築という、いわば“パッケージ商品”です。しかしそれでは、システムの導入で営業活動は終わってしまう。あとは決済システムが自動的に動いて、手数料収入を計上していくだけです。これではだめだという問題意識から、加盟店の認知拡大を追求し、付加価値の拡大を図ってきました。しかし、役員からの指摘のように、インバウンドが大きく拡大しつつある今、カード所有者を積極的に加盟店に送り込むことを考える時です。WEBサイトを使った認知拡大だけでなく、さらに送客を担う事業として目標を明確にしながら新しいビジネスモデルをつくろうと思いました」。

「ココイコ!」の実証実験が
示したこと

実は送客について、細谷には経験があった。レコメンドサービスの「ココイコ!」を活用したCLO(Card Linked Offerの略。クレジットカードによる新たなマーケティング手法を指す。)の実証実験の担当者が細谷だったのだ。「ココイコ!」を簡単に説明しておこう。これは、カード保有者がスマホアプリ上で加盟店への訪問をエントリーし、期限内に対象店舗でカード決済をするだけで「キャッシュバック」や「ポイント」などのメリットが発生するというサービスだ。クーポンを出力したり提示する必要がなく、カードで決済するだけでサービスが受けられるから使いやすい。実験結果も上々で、加盟店への送客効果がはっきり表れていた。

全社を巻き込む
ビッグプロジェクトへ

「『ココイコ!』を訪日外国人向けにつくればいいと思いました」と細谷は振り返る。もちろんそのためにはアプリ開発が必要になり、大きな投資もいる。事業は全社を巻き込むプロジェクトに発展し、より上層部の決裁を仰ぐことになる。「おもしろくなってきた」と細谷は感じていた。やがて細谷が練り直した「JOURNEY of JAPAN」は、従来の加盟店情報とおすすめショップや旅の記事を組み合わせたものに加え、スマホアプリを連動させたものになった。訪日前はWEBサイトで旅行先や加盟店の情報収集、日本滞在中はアプリで加盟店の割引情報やルート案内を通して加盟店に誘導するというものだ。インバウンド向けのプロモーション&マーケティングツールをカード会社として初めて形にしていったのである。

GlobePassを組み込み
海外顧客にアクセス

新規の事業構想は社内でも話題を呼んだ。「これこそわれわれがやるべきものだ」という気運も盛り上がっていく。しかし問題があった。まだ来日していない外国人観光客に、いかにアプローチするのか? そこに打ち手がいる。その時、細谷の頭に浮かんだのが「GlobePass(グローブパス)」だった。これはアジア各国の金融機関が提携して設立したアライアンスネットワークで、国際的なクーポンサービスを展開している。一方で、せっかくのアライアンスがまだまだ活かし切れていないということは細谷も感じていた。潜在的なインバウンド客へのアプローチにこの「GlobePass」が使えないか? 細谷はすぐに担当の部署に走った。

ダイレクト・プロモーションの
機会を獲得

「『GlobePass』を『Journey of Japan』のサービスに組み込めば、海外の会員は、自国にいながら日本の旅行情報や興味のある店の情報が手に入り、逆に日本の加盟店は、カードの利用履歴から自店舗に向いているとあらかじめセグメントされた顧客向けに割引サービスの存在を示して誘客につなげることができます。『GlobePass』そのものの活性化にもつながります」。「お互いにメリットがある」と、細谷は懸命に説いた。もちろん「GlobePass」が取り決めている加盟店クーポン情報の活用や保守についてのルールを厳格に守ることはいうまでもない。間もなく担当部署と細谷らが合意。「GlobePass」を取り入れることが決定した。

次は営業部隊。
彼らは立ち上がってくれるのか?

当初の、WEBサイトの構築による認知拡大と加盟店の広告出稿による収益の確保というビジネスアイデアは、アプリと連動して送客する仕組みを組み込んだインバウンド向けビジネスモデルとして大きく発展し、新規事業としての着手が決まった。しかし、まだ手放しでは喜べないと細谷は感じていた。「後は営業部隊です。彼らがどこまでこの事業を理解し動いてくれるか」――本当にビジネスモデルとして確立できるのか? 営業部隊は「サービスを売る」という新たな取り組みに、共に立ち上がってくれるのか?不安を胸に細谷のチャレンジが続いた。

JOJ Journey of JAPAN

Phase 03 難関

「儲かるの?」――そうではない
新しいことを始めるのだ。
賛同者を拡大していく。

「JOURNEY of JAPAN」が
いよいよ離陸する

新たな事業の基本計画に基づいて、細谷はまずサービスのベースとなるWEBサイト「JOURNEY of JAPAN」を完成させた。三井住友カードの加盟店の深掘り情報を掲載する“ショッピングコンテンツ”と、日本の魅力に迫る“観光コンテンツ”を組み合わせたインバウンドメディアだ。さらにそこに、アジア圏で多くの会員組織を擁する「GlobePass(グローブパス)」を連携させている。訪日前の各国のクレジット会員に「GlobePass」を使ってキャンペーン情報やそれに関連する優待クーポンなどを発信し、日本の加盟店への誘客と消費拡大を目指す。新事業のツールは揃った。ここからは加盟店を「JOURNEY of JAPAN」に呼び込む営業活動に入る。社内の営業部隊向けに説明資料をつくり「こんなサービスを始めます」と勉強会を設定していった。

「こんなものは持っていけない」
――理解は得られなかった

しかし、周囲の反応は冷淡だった。「それでうちは儲かるの?」と営業の上席から声が挙がる。「こんなもの加盟店さんに持って行けるか」という顔をしたベテランの営業マンもいた。「サービスを売る」ということがわからないのだと細谷は思った。多くの人が端末を置いて決済手数料を稼ぐというビジネスモデルから抜け出すことができない。「この『JOURNEY of JAPAN』というプラットフォームを使って積極的にプロモーションを展開し、加盟店さんに送客する、そのために有効ないろいろなキャンペーンを加盟店さんと一緒に考えて打っていきます。そういう事業です」と細谷は力説する。しかし「それってカード会社の仕事? 広告代理店みたいだな」――相変わらず反応は鈍かった。

自分で動く。
方向性は間違っていないはずだ

細谷は自分で動くしかないと思った。説明資料を手に地方へ飛ぶ。北から南まで、営業所を訪ねて説明し、加盟店への呼びかけもまずは自分でやった。現地の営業担当者は気乗りのしない顔で同席している。細谷は加盟店に説明すると同時に、隣の同僚に向かって「JOURNEY of JAPAN」の魅力を語り、あなたのお店を告知できるプラットフォームです。契約をいただき一緒にインバウンド向けの施策を考えていきましょうと誘った。しかしなかなか契約は取れない。地方で過ごす何日目かの夜、細谷は一人でバーのカウンターにいた。このまま営業は動かないのか? しかしなんとか離陸させた事業だ。簡単には諦めないぞ。自分を奮い立たせた。

ついに地方から挙がった
支持の声

地方で始めた何件目のプレゼンテーションだったろうか。「細谷さん、さっき隣で聞いていてよくわかりました。ぼくもこういう営業提案こそ必要だと思います」と若手の営業マンから言われた。思わず細谷の表情が緩んだ。「カード会社はただ端末を置いてくるだけが営業じゃない。これだけインバウンドの波が来ているんだ。なんとか加盟店さんの売上拡大につなげたい。その打ち手をカード会社として考えるのが、今のわれわれの使命だと思う」と細谷も熱を込めた。「『GlobePass』もついている。多くの海外会員とのコンタクトなんて誰でもできることじゃない。キャッシュレス決済拡大も社会の要請だ。プロモーションツールとして「JOURNEY of JAPAN」を活用し、加盟店さんにインバウンドを送り込もうじゃないか」。

逆境に挑んだ理由

本プロジェクトを立ち上げた社員が語る。
新規事業を実現させる苦労と想い。

社員からも
前向きな声があがる。

当初JOJは、海外カードホルダーへの「カード決済のできるお店紹介ツール」という位置づけに留まっており、カード会社がそこまで注力すべきサービスという認識がありませんでした。しかし、次第に細谷さんと営業活動を行うなかで、Wi-Fi情報をJOJに掲載したり、JOJ掲載した加盟店での海外カード利用分析を行うなど、サービスそのものの付加価値を高めることができ、相次いで多くの地公体や企業にサービス導入頂くことができました。

当初、SEO対策や記事の掲載等、インバンド需要取込に必要なソリューションができたと感じました。とはいえ、取引先へ提案するも無償サービスばかり申込があり、なかなか有償サービスの成約には繋がりませんでした。そんな中、細谷さんと一緒に取引先へ往訪したことや、勉強会を実施して頂いたことで、どういう取引先にニーズがあるかが分かるようになり、今では多くの成約案件が出来ました。

「今ほしいのは情報です」
その言葉に細谷は膝を打った

数は多くなかったが、地方の加盟店には、中にはインバウンドの誘客に高い関心を持っている店舗もあった。そこで細谷はこんな話を耳にして密かに膝を打った。話というのはこうだ。「確かに外国人観光客の姿は増えている。都会では当たり前だろうが、地方に来てくれるのはありがたい。しかし、どこで情報を得て、何をしに来ているのか、そもそもどの国から来ているのか、まったくわからない。だから打ち手がない。今一番ほしいのは情報だ」と。他の店舗からも「インバウンドの動きがわかれば、地域としてもいろいろな策を講じることができる。データを見せてもらうだけでもこの契約は価値がある」という声があった。「決済情報か」――確かにそれを分析すればおもしろくなる。

会社には
宝の山が眠っている

「いつ、どこで、誰が、どんな商品やサービスを利用したのか。さらにそのデータをSNSや位置情報と組み合わせれば、インバウンドの関心事項や消費行動が浮き彫りになります。これをベースにすれば、どの加盟店が、誰に向けてどんなキャンペーンを打てば有効か、戦略が浮かび上がるはずなんです。ただ来店を待つのではない。関心のある層を確実に呼び込むことができる」と細谷。「GlobePass」を使って、セグメントしたターゲットに訪日前にキャンペーンを打つのもいい。そしてその効果も決済情報を分析すれば浮かび上がる。PDCAを回していくことができるのだ。われわれは宝の山をもっている、細谷はそう思った。その思いを確信に変えたのは、いま地域営業部にいる営業マン時代の大先輩からの電話だった。

急な呼び出しを受けた。
「今すぐ来い、市役所に行こう」

近況を紹介し合うのももどかしく、電話の向こうで先輩が懐かしい太い声で話す。「おもしろいのをつくったな。説明資料を持ってすぐこっちにこれないか。うちの県庁に持っていきたいんだ」「県庁ですか?」「そう、県庁だ。お前鈍いな。インバウンドのデータを一番ほしがっているのは自治体だ。地方創生だよ」細谷はすぐに飛行機を予約した。加盟店から「インバウンドの動きがわからない。それを知りたい」という話は聞いていた。しかし考えてみれば、それは地域の振興を喫緊の課題にしている自治体の切実な思いでもある。「自治体向けの魅力的なサービスになる」――細谷は確信した。新事業「JOURNEY of JAPAN」の視界が開けそうだった。

自治体担当者は
身を乗り出した

空港からその県庁に向かうまでの間、先輩は自ら車を走らせながら、電話の続きを話した。「自分の街に入ってくるインバウンドが、どこから何をしに来ているのか、観光課はもちろん地域振興課も中小企業課も政策課も統計課も、みんな知りたいんだ。しかし、それがわからないから打ち手もわからない。しかしうちにはすごいデータがある。インバウンドの消費を拡大させるにはどうするか、どんな策が有効なのか、それを見極める大元は、このデータの中に全部あるんだ」。行政組織の通例で縦割りだから、各課を回って同じ説明を繰り返すことになった。しかし、どの課でも担当者は身を乗り出すように細谷の説明に耳を傾けている。

新規事業は
新たな方向に伸び始める

「これはすごいですね。どこで何を消費しているか、時間帯までわかるんですね」「自治体主催のイベントやキャンペーンの企画の材料としてこれ以上のものはない」「地元商店街の活性化とか、キャッシュレス推進にも有効だ」「施策の効果検証も明確にできますね」……これほどの支持を細谷も想定していなかったが、インバウンドの実態がまったくつかめていなかった自治体にとって、「JOURNEY of JAPAN」という新事業が背後で確保する決済情報は、効果の高い施策を立案するために欠かせない。自治体に何らかの形でデータを提供しながら、インバウンド向けのキャンペーン施策を練り上げ、そこに加盟店を巻き込むこともできるだろう。

自治体向けに
事業企画書を作った

東京に戻り、細谷は自治体向けの新しい企画提案書づくりを始めた。提供するサービスは3つ。(1)地域の消費拡大を目的とした「クレジット利用データ」に基づく国別、地域別、時間帯別の消費動向レポートの提供、(2)消費動向分析に基づいた「地域キャッシュレス促進」「地域集客・消費活性化キャンペーン」等の施策を企画・実施、(3)クレジット消費の伸びから施策の効果検証を行い、次年度に向けての改善提案を実施。当然だが、決済情報をそのまま外部に出すことはあり得ない。個人情報保護法や銀行法の遵守、企業としてのモラルも守らなければならない。どう加工し、どんなスタイルで提供すればいいのか、法務部の説明を受けシステム担当者とも話合って企画書をまとめた。

まるでベンチャー企業の
社長のように

いつもの、一からの事業立ち上げの作業だ。サービスの提供価格も自分で決め、事業収支計画を練り上げる。導入しやすいように範囲を絞った廉価版のパッケージも用意した。上長の承認を取り付け、賛同者を募り、勉強会を実施し、全国にリリースして自らも営業の先頭に立つ。まるでベンチャー企業の社長である。今度は最初から手応えがあった。地方の営業所から、来てくれというリクエストが相次ぐ。間もなく自治体へのサービス提供契約も獲得でき、自治体と連携したインバウンド向けのキャンペーンもスタートした。そこに加盟店を巻き込んでいく。加盟店を「JOURNEY of JAPAN」に集めるだけでなく、自治体が打つキャンペーンのランディングページとして「JOURNEY of JAPAN」を活用するという新たなビジネスモデルの始動だった。

JOJ Journey of JAPAN

Phase 04 展望

自治体とのタイアップが始まり
SMBCグループが動く
事業は新たな段階に入った。

新規事業は
ビッグプロジェクトへ

キャッシュレス決済の遅れがインバウンドの拡大を阻害しているのではないか。キャッシュレス決済を拡大し、さらに消費拡大を実現していく――その社会的要請にカード会社として答えようとしてスタートさせたのが「JOURNEY of JAPAN」だ。その後加盟店向けの営業活動を進めながらビジネスはさらに発展。単なる加盟店紹介ではなく「GlobePass」を活用した送客プロモーションへ、さらには決済情報の分析を活かした自治体と一体のインバウンド拡大の総合提案へと歩みを進めてきた。「手応えを感じています」と細谷は振り返る。実際、細谷が自治体向けに用意した提案書は高い評価を獲得、サービス提供契約が相次いだ。地方自治体や地元企業と連携したインバウンド誘致のタイアップ企画も続々とスタートしている。

地方創生事業として
確実にPDCAサイクルを回す

タイアップの第一弾は熊本県だった。その後、仙台市や佐賀県が続いた。実施した「訪日外国人向け誘客・消費拡大プロモーション」の基本的な内容はこうだ――県や市のの観光情報やクレジットカードが使えるおすすめの店舗情報、優待情報を「JOURNEY of JAPAN」に掲載、また掲載店舗を対象として消費拡大キャンペーンを企画する。さらに「GlobePass」を活用してこれらの情報をアジア圏のカードホルダーにダイレクトに送信して来日を促す。そして日本でクーポンや割引を使って商品やサービスを購入してもらう。企画終了後には、決済情報などからカード利用者の利用動向や動線などの分析を実施し、次の施策へとつなげていく。タイアップ企画の実施自治体ではすでにこのサイクルを回し始めている。

新規事業は
三井住友フィナンシャルグループ全体に波及した

事業の拡大に手応えを感じていた細谷に、もう一つうれしい動きがあった。三井住友カードが属する三井住友フィナンシャルグループのグループ会社の多くの地方支店から問い合わせが入り始めたのだ。「支店の営業担当がこのソリューションを県や市に持っていきたいといっている。同行して説明してくれないか」と。各地方支店にとって地元自治体は重要な存在だ。指定金融機関として協力したり自治体の事業を資金融資で支えることもある。特に多くの自治体が「地域の再生」という課題を抱え、インバウンドの獲得を大きなテーマにしている中、細谷の事業企画は魅力だった。この提案が銀行と自治体との信頼関係をさらに厚くすることにつながる。細谷がひとりで切り拓いた事業の後を三井住友フィナンシャルグループという巨艦がゆっくりと舵を切りながら追いかけてきたのだ。

地方こそキャッシュレスの
推進が求められている

2018年の訪日外国人数は前年の2,869万人を大きく超えて3,000万人台に突入し、過去最高となることが確実になった。春以降多発した豪雨や台風による災害などマイナス材料がありながら増加傾向は揺らいでいない。今後もアジアの経済成長とともにインバウンドは大きく拡大していくだろう。懸念はやはりキャッシュレス決済の遅れだ。特にインバウンドの消費傾向が「モノ」から「コト」へと移り、都市から地方へと向かう中で、地方におけるキャッシュレス化の遅れは深刻だった。解決は緊急を要し、カード会社が果たさなければならない社会的使命でもある。そのことに一つの答えを、どのカード会社も取り組んでいない新たなビジネスモデルとして実現できたことを、細谷は誇らしく思っていた。

プラットフォームはでき、マインドは育った。
あとはアイデアだ

「もちろん、まだまだです」と細谷は急いで付け加える。「WEBサイトのページビューも目標にはほど遠いし、加盟店の来客数アップや売り上げへの寄与も、数字で顕著に見えるところまではいっていません。三井住友カードが新ビジネスでどれだけの収益を上げたのかといわれれば、胸を張れるほどのものはまだないのです」と細谷。しかし、新しい事業の基盤はできたと思っている。「プラットフォームはほぼ完成し、サービスを売るというマインドも、まだ小さな芽ですが育ってきました。このソフトウェアとマインドがあれば、そこに乗せるサービスはどんどん湧いてくるはずです。私の頭の中にも5つや6つのアイデアはあります。これからは多くのメンバーで考えていけるでしょう」。

信頼できる組織があるから
冒険ができる

「カード会社の社員というのは、融通の利かない面白味のないヤツだという感じがしませんか?」――長い物語の終わりに唐突に細谷が口を開いた。確かに世間には、銀行系クレジットカードの担い手に、仕立ての良い紺のスーツを着込んだ金融マンのような印象を持っている。「信頼いただけるシステムを持ち、その担い手がいるということは、われわれのビジネスの基本であり最も大事なことです。それは誇りでもあります。でも、その組織にも、少数でいいけれど冒険家がいなければいけないと思う。私はそのひとりでありたいと思ってきました」。

カードの世界をもっと楽しく。
事業は今、第二章へ

「これだけのセキュアな決済インフラと膨大な数の加盟店とカード会員と、そして日々積み上げられている決済データがある。キャッシュレス社会の新たなサービスをつくるのは、これだけのアセットを持ったわれわれ以外にないんです。他に誰がいますか?」と細谷は言う。「後はアイデアだけです。システムとデータを守る強固な部隊がいるからこそ、私は自由に戦える。その環境に感謝しながら、私はカードの世界を、もっと楽しいものに変えていきたい」。見ていてくださいと、細谷は物語を締めくくり、雑踏する街の中に足早に消えた。人々が行き交う街の中にこそ次の事業のヒントが隠れている。第二章への歩みは、もう始まっている。

事業は新たな段階に入った

仕事を進める上で大切にしていること、
そして共に働きたい仲間とは。

SMCCのFIRST WAVEは
今後も続いていく。

社会の先陣をきる興奮を、君は味わいたくないか。
私たちは決済ビジネスの新しい形を創造し、
社会の形を変革し、常識を覆してきたパイオニアだ。
誰よりも、真っ先に、先陣をきる。
それが私たちのDNA。
そして今、
技術とマーケティングを進化させることで、
理想を現実にさせる、新たな仕組みを創ろうとしている。
日本の隅々にまで消費活動を広げ、
この国の経済を活性化させる。
人々の生活を根底から良くしていく。
そんなチャレンジが、快適な世の中を形創っていく。
そのすべての先駆者になるのが、私たちだ。
この世界で、君が真っ先に成し遂げたいものは何か。
世界が驚くファーストウェーブを、共に創らないか。
さあ、あなたなら、何をつくる?